マツ枯れのしくみ (2)


Q1: 酸性雨や大気汚染でマツが枯れていますか?



A1: いいえ,現在の日本では見つかっていません
 
 前の質問で大気汚染のことは説明しました。植物が生きていくためには葉の気孔を通して二酸化炭素を吸い,酸素を出すことが必要です。このときに有害なガスも葉の中に入ることは防げません。だから,大気汚染が大きな問題となっていたのです。
酸性雨の原因となる硫黄酸化物の濃度変化
 酸性雨の原因となる硫黄酸化物の濃度変化,1970年代の前半までは大きな問題


 酸性雨というのは,大気中の有害なガスが雨の中に溶けて地上に降ってくることです。雨で有害ガスが洗われて,空気は元どおりになります。20年位前のヨーロッパでは大気汚染(たいきおせん)が国境を越えて遠くに運ばれ,空気がきれいなはずのスカンジナビア半島に酸性雨を降らせました。そのため,湖や河川の水が酸性になり魚が住めなくなりました。そのころ,トウヒやモミ,マツなどの樹木が弱ったり枯れた現象が各地で見られたことから,酸性雨のせいではないかと言われたのです。そこで,森林が枯れる原因について各国で研究が進められるとともに,国際協力によって,大気汚染と森林衰退の監視(モニタリング)が1985年から開始されました。日本でも1990年から,林野庁と各県の林業研究機関が協力して「酸性雨等森林衰退モニタリング事業」をおこない,森林の健康状態を監視しています。

 10年以上にわたるヨーロッパでの調査の結果,大気汚染が特にひどかった東ヨーロッパの一部地域では大気汚染による害が認められましたが,異常気象による乾ばつや低温が大部分で,虫害による被害などもあることがわかりました。モニタリング調査のうち,葉の量を眼で見て判断する調査が最も詳しく行なわれています。この結果によると,ヨーロッパの森林の半分以上では,何らかの原因で葉が少なくなっていますが,樹木の成長は悪くなってはいないそうです。現在の酸性雨はイオウ酸化物よりチッソ酸化物の割合が多く,チッソ化合物が肥料となって樹木の成長が良くなるため,寒さや干ばつの影響を受けやすくなっているのではないかとも言われています。

 日本で行なわれている全国的な調査結果でも,大気汚染や雨水の酸性化が原因と考えれる森林や樹木の衰退は見つかっていません。森林や樹木の状態が良くないとみられる場所でくわしい調査を行なった結果では,台風による被害,乾燥による害,病気や虫害,野生のシカによる被害など,場所によって異なる原因が明らかにされています。

ヨーロッパと日本の森林衰退の原因