マツノザイセンチュウはもともと北アメリカにいたもので,北アメリカでは元気なマツを枯らすことはないようです。これは,長い間にマツとセンチュウの関係がうまくできあがり,弱ったマツを少しだけ枯らすことで,マツもなくならない,線虫もいなくならないしくみになっています。日本のアカマツやクロマツはマツノザイセンチュウと出会って100年くらいしかたっていませんので,抵抗力がほとんどないのです。アメリカでもヨーロッパ原産のマツはマツノザイセンチュウによって枯らされます。
マツノザイセンチュウによるマツ枯れは世界中の心配ごとになっています。アメリカはこの線虫の原産地ですから,マツには抵抗力があります。でも,アジアやヨーロッパには日本と同じように線虫に弱いマツの種類が多いので,この線虫が輸入木材といっしょに入ってこないよう監視をしています。マツは機械類を運ぶときの梱包(こんぽう)の材料にされることが多いので,ふつうの木材の輸入とは違ったところにも注意が必要です。
Where a Member State considers that there is an imminent danger of the introduction into its territory of Bursaphelenchus xylophilus (Steiner et Buhrer) Nickle et al., the pine wood nematode (PWN), from a non-menber country, it shall temporarily take any additional measeures neccessary to protect itself from that danger. (Official Journal of the European Communities L81: 39-41)
検疫対象梱包材: 針葉樹を使用した梱包材。具体的には,パッキングケース,ボックス、カゴ,ドラム,および同様のパッキングパレット,ボックスパレット,その他のロードボード,パレットカラー。ただし,クロベ属は除く(注:モミ属,トウヒ属,トガサワラ属,カラマツ属,ヒマラヤスギ属にもマツノザイセンチュウが寄生していることがあるため,検疫の対象になっている)。
検疫要求基準: 下記の3方法のいずれかを行なう(中国を除く)。
(1) 木材の中心温度を最低30分以上56度C以上で熱処理、もしくは窯で乾燥処理し、その処理を証明するマークを付する。
(2) EUで承認された化学物質を木材に注入し、マツノザイセンチュウを駆除するとともに、その証明を付ける。
(3) EUで承認された薬剤で薫蒸処理し、その証明を付ける。
中国については、指令2000/29ECの第7条、および第9条に定めている処理(1.樹皮が付着していないこと、2.直径3mm以上の虫孔がないこと、3.木材の含水率が20%以下であること)およびその証明書を付けることで対応する。
(農林水産省訳:http://www.maff.go.jp/soshiki/keizai/kokusai/kikaku/2001/20010322belgium13a.htm より抜粋)
なお,中国も日本に対して輸出材を加熱消毒することを求めています。しかし,少なくとも1982年以降,中国はマツノザイセンチュウの汚染国となっていますので,EUは日本と同じに見ています。
◎中国では
1999年11月に日本やアメリカからの輸入品に使われていた梱包材から「マツノザイセンチュウ」が発見されたので,梱包木材を「熱処理」などで消毒するよう通告がありました。
具体的には,針葉樹材について,芯材部分の温度56℃以上で30分間以上処理して,日本国政府担当部局の証明書の付けることが要求されています。
このため,日本政府は2000年1月より中国向けの輸出品を梱包する針葉樹梱包材について,マツノザイセンチュウの中国への進入を防止するため,植物防疫所では熱処理がされていること確認し、合格証明書を出すという輸出検疫をおこなうようになりました。
その後,中国側向けの輸出品の梱包材からマツノザイセンチュウが見つかったとの知らせがあり,日本の農林水産省の担当官が出かけて確かめました。そして,2001年6月12日に,農林水産省から日本の関係団体に,適切な熱処理をする,処理をした材をよく管理する,消毒済みの合格証明書を必ず付けるということをきちんとおこなうよう要請されました。
このように,マツノザイセンチュウの存在は森林だけでなく,日本,世界の産業界にとっても大きな問題となっています。