トップ頁へ   四国情報索引へ 

四国情報 No.12 (1994)

第3セクター素材生産事業体の動向

経営研究室   山田 茂樹・松村 直人

 第3セクターによる素材生産事業体は,均質かつ安価な外材製材品の大量供給により国産一般材がそれらと「コスト競争」を余儀なくされ,また,林業労働力の不足,高齢化もより深刻さを増しているという近年の状況に対処するものとして各地で設立されています。四国地方は63%と高い人工林率を誇り(全国平均43%),活発な林業生産活動を展開している林家も少なくないことを反映してか,そのような事業体は,愛媛県,高知県などにすでに4事業体存在しましたが,あらたに本年5月,高知県吾川村に「Xソニア」が設立されました。本稿では,これにかかわって,第3セクター方式の素材生産事業体について,若干触れてみたいと思います。

 第3セクター化には,1)諸外国に比べて相対的に低位にあるわが国の素材生産の労働生産性を,規模を拡大し高性能林業機械を導入することなどにより向上させコストダウンを図る,2)合理的作業体系の導入による労働強度の軽減等の労働条件の改善,経営基盤の安定化による勤務体制,給与体系等の雇用条件の充実や就労者が自らの仕事を自負できるような条件の整備などにより労働力を安定的に確保する,などの目的があり,各地でこれまで設立された第3セクターの多くはそれぞれ体制を整え,若年層の雇用を実現するなど一定の成果をあげています。

 しかし,その給与体系−公務員等に準じた賃金水準と昇級体系−から生じる問題,つまり将来の賃金水準の上昇にどのように対応するのか,また,充分な事業量を確保できなければ,高能率な作業体系を採用し得たとしても,施設・設備の遊休化や従業員の通年雇用に支障をきたし,従業員の固定的雇用や事業体としての健全な発展も望めないことから,設備,人員に見合った事業量を確保しなければならないといった問題があります。
 「Xソニア」は高岡郡と吾川郡の5ケ町村(高岡郡佐川町,越知町,仁淀村,吾川郡池川町,吾川村),5森林組合,2地方銀行が出資し,各町村の首長が取締役に就任するかたちで設立されたものですが,出資金額が15億円(平成9年度までに関係団体が出資)と,これまでの第3セクター会社と比較して非常に大きいことが特徴として指摘できます。これを,現在林野庁が推進している「流域管理システム」の優良事例としても取り上げられ,これまで出資金額最大とされてきた高知県禎北地域の第3セクター「Xとされいほく」(平成3年7月設立)の1億5千万円と比較しますと,「ソニア」の出資金の破格の大きさが理解できると思います。15億円のうち約9億は設備投資に,約6億程度を内部留保し基金化して運営資金として利用する等,将来の賃金上昇分などを考慮して対処しているわけです。

 また,当初は素材生産事業のみですが,将来は事業範囲を農作業の請負等にまで拡大し,いわば「農林総合事業体」としての発展の青写真を措いています。事業量確保のための多核的事業展開は全国のいくつかの優良事業体にみられる方向性ですが,農業分野への本格的進出の事例はほとんどみられません。「Xソニア」の場合も法人設立の際の事業認可の関係で具体化しているわけではありませんが,出資者である市町村にはそのような意向をもっているところがあるようです。 このような「Xソニア」の方式が実を結べば,文字通り地域の農林業の核としての機能を果たすことが期待されますが,それはまさに同社の今後の事業展開にかかっています。また,他の第3セクター林業会社や一般の素材生産事業体においても,事業量の安定的確保や労働力の確保にかかるさまざまな努力がなされており,われわれ経営研究室では,今後,これらの事業体の展開を注意深く見守るとともに,素材生産事業体の事業の安定的展開のための諸条件を明らかにしていきたいと思います。
 
 四国情報一覧へ