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四国情報 No.24 (2000)

四国山地の火山灰はどこから来たか?

林地保全研究室 鳥居厚志

 四国には火山がありません・・・・というと厳密には正しくないのですが,有珠山や阿蘇山,桜島のように現在噴煙を吹き上げている火山はありません。たとえば,香川県の小豆島や琴平山,愛媛県の石鎚山から久万高原にかけての山々などは火山なのですが,活動していたのは百万年以上前や数十万年前と考えられています。有史以後,一切活動していないわけですから火山であると言われてもピンときません。

 一般に火山が噴火すると,火山灰や軽石などの火山放出物が多量に地表に降り注ぎます。厚く積もった火山灰は,土を形成する材料となるわけですが,その一方で,うんと長い年月の間には浸食されて地表から流れ去ってしまいます。北海道や東北,九州には,現在活動中か,またはここ1万年くらいの間に活動した履歴のある火山が多く,そのために多量の火山灰が堆積しており,いわゆる「火山灰土壌」が広く分布しています。

 写真 火山ガラス(粒径はおよそ200μm)
 四国には,そのような本格派の火山灰土壌はほとんどみられません。また,地面を掘っても火山灰層が見つかることは稀です。しかし土の中に多少の火山灰が混じっていることなら珍しくないのです。土のサンプルを篩にかけたり薬品で腐植を分解したりして砂の粒子を分離し,顕微鏡で観察してみると,色々な鉱物や,岩石の破片が見られます。その中に「火山ガラス」と呼ばれる,火山灰の主成分が見つかることがあります(写真)。
 
 徳島県や高知県(図-1)の土壌に,どのくらいの火山ガラスが含まれているかを調べた結果が表-1です。調査地点によって数字はばらついており標高の高い地点の方がやや含有率が高い傾向がうかがえますが,4調査地点全ての土壌に多少とも含まれていました。特定のサイズの砂(粒径が50μm〜200μm)の中での含有率ですから,土壌全体から見れば量的には多くはありませんが,火山のない四国山地の表土に,なぜ火山灰が存在するのでしょうか?この火山灰はどこから来たのでしょうか? 
 図−1 調査点の位置
 多くの火山学者,地質学者の努力によって,日本国内の最近(といっても,ここ数万年間を指しますが)の大規模な火山活動の概略が明らかになってきました。たとえば,九州の鬼界カルデラは6300年前(アカホヤ火山灰)に,姶良カルデラは2万数千年前(姶良火山灰)に,西日本全域に20cm以上の火山灰を積もらせるという(図-2),想像を絶する規模の爆発を起こしたと考えられています。火山ガラスは,顕微鏡で見たときの外観の特徴や,屈折率などの光学性,元素組成などの特徴から,ある程度その起源を推し量ることができます。今回の調査で検出された火山ガラスの形態や光学性を調べたところ,それらはおもにアカホヤ火山灰起源であることが明らかになりました。
 図−2 巨大火山噴火の火山灰分布
 6300年前の火山灰が土壌の材料に含まれているのですから,土壌というものは非常に長い年月をかけて育まれてきた貴重な資源であり,今後も保全されるべき財産であると言えます。さらに長い地質年代的な時間スケールの中では,いつかは山は浸食され火山灰も流れ去るか風化して消失してしまいます。しかし森林の取り扱いを誤り,はげ山化したような場所では,ほんの数年で表土が消え去ってしまうことも珍しくありません。我々は,先史時代から受け継いだ貴重な資源を浪費することのないように,慎重な山の保全を心がける必要があります。

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