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四国情報 No.24 (2000)

木質廃棄物の処理状況

連絡調整室 高野 勉


 ゴミ処理の問題がしばしば話題になっていますが,木質廃棄物処理の現状はどのようで,何が問題となっているでしょうか。建設省の調査結果では,建設木質廃材のリサイクル率は37%と,コンクリートやアスファルトなどのリサイクル率(約60%)に比べて低いため,木質廃棄物のリサイクル率向上が求められています。また,木質廃棄物の再利用は二酸化炭素放出量削減の観点からも注目されています。そこで,製材工場などの木材工業における工場残廃材と住宅解体材の発生・処理動向,および木質廃棄物を再資源化している廃棄物中間処理工場の現状を明らかにする目的でアンケート調査と聞き取り調査を行いました。木材工業で発生する工場残廃材については,国内総需要の7割を占める製材工場と,同じく1割を占める合板工場に対して調査を行いました。

木質廃棄物処理の概要
 木材製品と木質廃棄物の流れの概要を図-1に示します。これは今回の調査結果や既存の資料を基に作成したもので,一部については矢印の太さでおおよその処理量を表しました。なお,ここで木質廃棄物としたものの中には,一般に廃棄物に分類されないもの,たとえば木材チップなどの工業原料も含まれています。

 木材工業で発生する工場残廃材は,工業原料として製紙工場あるいは木質ボード工場で消費されるほか,家畜の敷料(いわゆる敷ワラ)に多く用いられています。木材製品の大半は建築用に使用され,建築時に端材などが廃棄物として排出されます。ここには廃棄コンクリート型枠材も含まれます。一方,建築物に使用される木材は解体されるまで二酸化炭素を固定することとなり,森林と共にその役割が注目されています。現在の木造住宅の寿命は約40年で,解体によって発生した木材は,建築廃棄物,木材工業からの廃棄物の一部,流通業において発生する廃パレットおよび使用済み梱包材などと共に中間処理業者によって粉砕,焼却され,焼却灰は最終処分場に送られます。中間処理業者の中には木材を専門に取り扱い,再資源化している業者があり,そこで生産された木材チップは製紙原料,パーティクルボードを主とする木質ボード原料,各種工業における燃料として再利用されています。

 製材業,合板工業における残廃材の発生・処理状況および中間処理業における木質廃材の処理状況について,調査の詳しい結果と今後の問題点を以下に説明していきます。

木材工業における木質工場残廃材の現状
 木材工業では以前から残廃材の工場内における再利用が多く,今回の調査結果でも自工場内の再利用率が高くなっていました。
 1996年における製材用素材の総消費量は37,328千m3で,背板が原料消費量の約20%を占め,以下,のこ屑が15%,樹皮が10%と続いていました。のこ屑とプレーナ屑は増加する傾向があり,これは製品に占める板割類の増加が原因と思われます。残廃材の用途別の推定発生量は,多いものからチップ製造6,521千m3,家畜敷料5,151千m3,燃料2,171千m3,堆肥・土壌改良材1,343千m3となっていました。それぞれの主な原料としては,チップ製造では背板,家畜敷料および燃料ではのこ屑と樹皮が用いられていました。焼・棄却量の75%は樹皮が占めていましたが,過去の調査結果に比較して焼・棄却分は減少し,再利用が進んでいることがわかります。このほか,家畜敷料への使用量が急増していました。

 1997年に国内の合板工場に投入された原料を100とした場合,生産される普通合板の量は64(4,257千m3)となり,排出される残廃材は36(2,395千m3)となっていました。残廃材のうち,チップとして売却されるのは7,その他の用途で売却されるものが1,焼・棄却されるものが0.5,自工場で燃料として再利用され,乾燥機および熱圧機の熱源とされるものが27となります。焼却されるもののほとんどは樹皮で,棄却されるのは工場内のダストだけでした。しかし,樹皮のうち焼却されているのは約30%,また,焼・棄却されるダストは全ダストの5%で,いずれも大半はボイラー燃料とされていました。

 製材業および合板製造業,いずれの業種においても焼・棄却されるものが原料消費量に占める比率は10%以下と低く,焼・棄却される残廃材の3/4を樹皮が占めていました。したがって,工場残廃材の再利用率をさらに高めるためには,樹皮の利用方法や集荷について検討を進める必要があります。特に製材業は小規模の業者が多く,残廃材の再利用に必要な最低限の量を安定して確保するためには,原料となる残廃材の集荷が問題になると思われます。


中間処理工場における木質廃材の処理状況
 産業廃棄物は収集・運搬業者から中間処理業者(粉砕,焼却,脱水など)を経て最終処分業者によって埋め立て処理などが行わます。厚生省の統計値によれば,中間処理業の許可件数は平成8年には約7,500件でした。この中間処理業者の中で木くずを専門に扱い,これを粉砕・チップ化して再資源化している業者が今回の調査対象です。木くず専門の業者だけを対象とした統計資料がないために正確な数字はわかりませんが,建設省による建設副産物実態調査によれば1992年のチップ化プラント数は99となっています。

 中間処理業で再資源化される木質廃棄物の総量や再資源化チップの用途別の量は不明ですが,調査対象工場では原料1,022千トンの49%を建築解体材が占め,以下,廃パレット材15%,廃コンクリート型枠材14%,梱包材9%,工場残廃材6%となっていました。以前の調査結果(1992年)と比較しても,原料種別の傾向に大きな変化はありませんでした。用途別の割合では燃料用が46%と最も多く,以下,木質ボード原料34%,製紙用18%となっており,1992年の調査と比較して燃料用の需要が減少し,木質ボード用原料としての利用が増加していました。

 現在,廃棄物に対する規制が強まっており,不法投棄されていた木質廃棄物の中間処理業者への搬入,焼却処分を目的とした処理から再利用への転換が進み,再利用施設における処理量は増加することが予想されます。しかし,現有の再資源化工場では処理能力が足りません。施設の新設が必要となりますが,廃棄物と製品チップのストックヤードの確保に加え,チップ製造工程における騒音と粉じんの対策など,特に都市部やその近郊地域での新設にはこれらの問題をクリアする必要があります。これに加え,新たな再資源化チップの需要開発も必要となっています。
 

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