森林の水土保全機能に関する質問と回答

森林の水土保全機能に関するよくある質問を集めました。


森林の発揮する水土保全機能とは何?

 森林は、木材を生産するだけでなく、@洪水や渇水を緩和する機能、A土砂の流出や斜面の崩壊を防ぐ機能、B清浄な水を供給する機能、CCO2を吸収し、固定する機能、D動植物の生息の場を提供する機能、など、多種多様な機能を発揮しています。このうち、@、A、Bをまとめて水土保全機能と呼んでいます。
 @の機能は具体的には、洪水時に河川流量を低減し、晴天時には水を供給する、すなわち河川流量を平準化する働きと位置付けられており、「水源かん養機能」ともいわれています。このようなことから森林は「緑のダム」と呼ばれるのです。


森林がないと、水土保全機能はどうなるの?

 森林がない場合(裸地の場合)、雨水は直接地表に到達します。雨滴の当たった衝撃で土の構造が破壊され、間隙が埋められてしまいます。そのため、浸透能が低下します。そうすると、浸透できなくなった雨水は地表面を流下するようになります。その結果、河川流量を急激に増大させてしまううえ、雨水が地表を流下する時に土が削りとられてしまいます。
 森林がある場合、林床の植物や落ち葉があることで、雨滴の衝撃は弱められるので、土の構造が壊されることが無く、雨水は土壌に浸透することができます。土の間隙に浸透した水は、毛管力を(大きな間隙中では弱く、小さな間隙中では強く)受けるため、ゆっくりと移動します。その結果、降った雨をすぐ流出させずに、降雨のない時に徐々に流出させることができるのです。


森林を皆伐すると、水土保全機能はどうなるの?

 皆伐すると、それまであった樹木の蒸散作用や樹冠遮断による蒸発(樹冠に付着した雨水の一部は蒸発し、大気へ戻ります)がなくなるため、流出水量は増えます。外国で行われた大規模な実験によると、皆伐し、植生が無いままにすると、降雨時の流出水量の最大値が大きくなることが明らかにされています。この結果は森林があると洪水を緩和することを証明するものです。一方、皆伐後、晴天時の流出水量が増えることが報告されています。このことは森林が渇水を緩和することを否定するものです。また、ヒノキの人工林に関して皆伐後、土壌の透水性が低下した事例が報告されています。日本では皆伐を行っても、自然に植生が回復し、植生がなくなることは珍しいのですが、水土保全機能の低下を招く可能性もあるので、皆伐には注意が必要です。


森林を間伐すると、水土保全機能はどうなるの?


 間伐も一部の樹木がなくなるので、蒸散や樹冠遮断が減ります。その結果、流出水量は増えると考えられます。ただし、皆伐に比べると流出水量の増加は少ないと予想されます。そのため、流出水量の増加を実証するのが難しく、皆伐に比べると検証例は限られています。間伐すると、日光が林内に入り、林床植生が発達しやすくなります。その結果、土壌流亡が抑制されるので、間伐は土壌を保全する効果があると考えられます。一口に間伐と言っても、その内容は様々です。人工林を水土保全機能の高い状態に保つために、間伐などの森林施業と水土保全機能の関係についてきめ細かい調査を積み重ねる必要があります。


人工林は天然林より水土保全機能が劣っているの?

 両者を同一条件下で比較することが難しいので、違いがあるか否かを正確に判断しにくいのが現状です。しかし、外国で行われた大規模な実験で、広葉樹を伐採して針葉樹を植えた場合、針葉樹を植えた後の流出水量が少ないという結果が得られています。これは広葉樹より針葉樹のほうが蒸散や樹冠遮断による蒸発が多いためと考えられています。また、一部の人工林では土壌流亡など、水土保全機能の低下が懸念されていますが、その一方で隣接する落葉広葉樹林とヒノキ人工林を比較すると、土壌の間隙特性などについて大きな違いはないという報告もあります。人工林の全てで水土保全機能が劣るということではなく、一部の人工林(手入れされていないヒノキ林など)では水土保全機能が低下している可能性があるということだと思われます。